右足で地面を上手く蹴れない女児に、ディモコ理論による動的インソールを試みる
9才 女児 主訴:右足底痛、右腰部痛
右足の踵が床に着かない尖足歩行のため、運動時に右足底をしばしば痛める。運動を無理すると右腰を痛めることもある。先天性の足部変形で、1才時にアキレス腱延長術を受ける。将来的に腰や膝を痛めることを担当医に指摘されており尖足の再手術を勧められているが、時期は未定で現在は1回/年の定期検診のみ。保護者、本人ともにできれば再手術は避けたいとのこと。当院でできる靴のフィッティングとインソールを作製することで、現在進行形の痛みが少しでも軽減できないか可能な限り試みる。
初診時に普段よく履いている靴を見せてもらった。1足はハイカットのひも靴(アディダス)で、もう1足はハイカットのマジックベルトタイプ(アシックス)。交互に履いているが、アディダス社の靴はやや重たく感じるため、アシックスの靴を好んで履いているとのこと。足サイズは、足長(右160㎜ 左205㎜ 左右差45㎜)、荷重位での足囲(右128㎜ 左204㎜ 左右差76㎜)あり、下腿周径は左に比べて右が60㎜も細い。右ふくらはぎを触れると、普段から筋肉の動きが悪いためか冷たくこわばっている。裸足の状態と靴を履いた状態で各々歩行を観察すると、双方とも右足は地面を蹴っているというより身体を支えているといった印象が強く、靴を履いて歩くとその形態がより助長され歩行に不安定感が増す。
まずは、機能低下した右足の歩行の安定を第一に考えて、マジックベルトではなくひも靴を選択する。本人にひも靴の正しい履き方を教えることで、足と靴のフィット感を向上させて靴の重量感を解消し、靴のなかで足が機能的に働くよう足に覚えさせていく。さらに左右の足底にディモコインソールを挿入することで歩行バランスの改善を図り、歩くことに対する痛みや不安定感の払拭に試みる。動きが悪くなってしまっている右下腿筋群や足底筋、その他関連部位に対しても施術やストレッチ等を併行して行い、本人には学校でも遊ぶ時も必ず正しい履き方で靴を履くように注意を続けた。2ヶ月ぐらいからアディダスの靴底かかとに穴が開きだしたため、軽量かつしっかりとした構造のニューバランス社のひも靴に履き替えさせ1ヶ月ごとに経過観察を行った。
以下、初診時、2ヶ月、4ヶ月経過観察した右踵の接地状況を後方から撮影した画像。
初診時
2ヶ月後
4ヶ月後
4ヶ月経過し、下腿筋群が柔軟になったためか、尖足がやや改善されたためか、右踵が徐々にではあるが下がってきている様子が伺える。運動を無理した時に起こる右足底の痛みもほぼ改善し、足底の中足部で肥厚し硬くなっていた皮膚も柔らかくなっている。
足サイズは、足長(右160㎜→170㎜・左205㎜→211㎜)、荷重足囲(右128㎜→148㎜・左204㎜→218㎜)と約4ヶ月間の成長が伺えるが、気になったのが右足が左足よりも足長・足囲とも大幅にサイズアップしていること。これは、普段歩行やその他運動のなかで右足の使用率が増加したことにより成長が促され、筋力もそれに伴ってやや改善してきたのではないかとも考えられる。
歩行形態も、以前のような歩隔が広く歩幅が狭い不安定な歩行から、歩隔、歩幅ともに改善された安定歩行へと大きく変化し、4ヶ月前の初診時と比べると右足で地面を蹴って前に進むという動作が一目で確認出来る。女児がよく笑うようになったことは嬉しい。
未だ経過観察中だが、今後も右足を上手く使用する歩行習慣が継続されることで、右足部や下腿筋群がより改善されて安定した歩行で成長されることを見守りたい。
知足施術所では足・身体・靴・歩行の問題を根本から解決していきます。
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